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フランスでパン選び〜フランス人はどんな時にどんなパンを選ぶ??

フランスでパン選び〜フランス人はどんな時にどんなパンを選ぶ??

本場フランスパンはおいしい!私たちは、細長くて周りの固いパンをフランスパンを読んでいます。でも、パン屋やスーパー行くと、バゲット、バタールやフィセルという文字。クロワッサンは有名ですが、パン・ド・カンパーニュやヴィエノワーズなど、あまり馴染みがないパンも多くなりました。
近年日本では、お米よりパンの消費量が多くなり、本格的で美味しいパンも増えてきました。
パンの本場、フランスではどうやってパンを選びをしているのでしょうか?ちょっと覗いてみましょう。
フランス在住の吉田裕美子さんに、本場フランスでのパンの選び方、パンの名前の違いと使い方を現地ならでは視点で教えて頂きました。これから、パン屋さんに行くのがきっと楽しくなりますよ。

フランスの食事に欠かせないパン

フランスの食事と切っても切れない関係にあるパン。フランスの食卓になくてはならないものであり、また、日本人がご飯を愛するように、フランス人のパンへの思い入れは並々ならないものがあります。
毎日お気に入りのパン屋さんに通ってその日のパンを求めるフランスの人々。パン屋さんにはいろいろな種類のパンが並びますが、どのようにパンを選んでいるのでしょうか。それぞれのパンの特徴とともに見ていきましょう。

いろいろな種類がある「バゲット」

バゲット、と一口に言っても実はいろいろあります。バゲットはフランス語で「棒」という意味になり、棒のような形状のパンはすべてバゲットになるのです。
いわゆるバゲットと称されているものは「バゲット・クラシック」などとも呼ばれる重さ250gのパン。これが400gになると名前は「パリジャン」になり、反対に125gと薄い形になると「フィセル」に。そして小麦の穂のようにとがった形が左右に連なれば「エピ」となります。また「フリュート」などは地方によって標準となる重さが変わるので、旅先で地元ののフリュートを探してみるのも楽しそうです。

さらに、その名も「パン」というパンがあり、これは「クラシック」と同じくらいの長さで太さは2倍。その分、クラム(パンの中身の白い部分)の量が増えているのでかなり食べ応えがあるパンです。クラムが好きな人にはうれしいバゲットでしょう。

また、「バゲット・ヴィエノワーズ」は他のバゲットよりも見た目につややかな照りがあり、中身はふわふわ。ブリオッシュを思わせる甘味があり、食事向けというよりは朝食やおやつに食べられるバゲットです。
 このように、フランスにはいろいろなバゲットがありますが、その中でもフランスで一番人気なバゲットは、「バゲット・トラディシオン」と呼ばれるものです。

法令で製法が守られた、国を代表するパン(トラディシオンとクラッシック)

1993年、グローバル化が進むフランスで、伝統的な製法で作られたパンを大量生産されたパンと区別し保護するために、「バゲット・トラディシオン」の製法が制定されました。

いわゆるバゲットと呼ばれる「クラシック」と異なり、「トラディシオン」を製造するときの材料は小麦粉(小麦モルトパウダー、大豆またはそら豆の粉も規定に沿って添加可)、塩、イーストまたは酵母種のみ。「クラシック」では使用が許可されている添加物も「トラディシオン」では使えず、また、製造工程で生地の冷凍は不可、さらに焼き上げはそのパンが販売される場所で行われなくてはいけません。

「クラシック」と「トラディシオン」の違いは?

*写真上がクラッシック、下がトラディシオン

「クラシック」は「トラディシオン」よりも長さがあり、表面はつるんとしています。皮は「トラディシオン」よりやわらかで、焼き上がりによっては白っぽく見えることもあります。そのために「バゲット・ブランシュ」と呼ばれることも(「ブランシュ」は「白」という意味)。中の部分、クラムはきめが揃っています。

一方、「トラディシオン」の皮が白く見えることはありません。いつもきつね色にこんがりと焼き上げられていて、表面はパリっと噛み応えがあります。また、クラムには大きな気泡が見られ、食感はしっとりもちもち。また、「クラシック」よりもうっすら酸味を感じるかも知れません。
さてお値段ですが、「トラディシオン」よりも長さのある「クラシック」の方が数十円程度割安です。というのも、「クラシック」が早ければその日のうちに焼いてお店に出せるのが、「トラディシオン」は焼き上がりまでに3~4日かかる、つまり製造工程に手がかかるため。値段が少々高くても、「トラディシオン」を手にする人が多いのは、職人の技による味を求めて、のものなのです。

どんな時にどんなバゲットを?

*上からヴィエノワーズ、クラシック、トラディシオン

一言で言えば、決まりはありません。それぞれがそれぞれの好みのままに選びますが、それぞれのパンの食感や食べ応え感と、合わせる料理や食材の組み合わせを考慮します。

例えば、パン屋さんで売られている自家製のサンドイッチには「クラシック」が使われていることが多いです。「トラディシオン」よりもクラムが口の中で溶けていく感じがあるので食べやすく、急いで食べたい人には助かります。また比較的あっさりした味なので、いろいろな具材と合わせやすいのです。

ちなみに、フランスで一番人気のサンドイッチはハムとバター。シンプルですが、それぞれの具材の味が最もよく味わえるサンドイッチとも言えます。
個人的には、チーズと合わせるときは特に「トラディシオン」を選びます。パリっと存在感のある皮、小麦や酵母の香りが漂うもちもちとしたクラムは、強い個性を持つチーズとちょうど良いバランスを保ってくれると思うからです。

ちょっと、甘めのヴィエノワーズ

また、基本的に朝食は甘いものをいただくフランスで、いつもと目線を変えて朝食に「バゲット・ヴィエノワーズ」をいただくこともあります。「ヴィエノワーズ」は「ウィーンの」という意味で、もともとはオーストリア出身のパン職人によってフランスに紹介されたパンです。朝食としてのほか、子どものおやつとしてもとても人気があります。

強い個性には強い個性を(パン・ド・カンパーニュとパン・オ・セーグル)

このように、バゲットだけでもいくつもの種類があるフランスのパンですが、もちろんそれ以外の定番人気パンもあります。
例えば、「パン・ド・カンパーニュ」。小麦粉とライ麦粉をブレンドして作られますが、丸形もしくは丸みのある長方形の形をしたこのパンは、バゲットよりもずっと日持ちがします。
味はほんのり酸味が効いていて、香りもバゲットより強くなるため、繊細な香りを楽しみたい食事にはあまり向かず、パテやフォアグラ、生ハムやドライソーセージなどのシャルキュトリー、チーズなど、風味が強いものと合わせることが多いです。

また、スライスしたときの形を利用して、暑い季節にはトマト、モッツァレラチーズやシェーブルチーズ、バジルなどを乗せてイタリア風のブルスケッタにすることもよくあります。そして、ライ麦粉で作られる「パン・オ・セーグル」は「パン・ド・カンパーニュ」よりさらに酸味が増します。フランスでは牡蠣や海老などの魚介類と言えば、合わせるパンは「パン・オ・セーグル」というのが定番になっています。
「パン・オ・セーグル」の酸味が、魚介類や魚を食べているときの口の中をさっぱりとさせてくれるのでしょう。

パン職人のイマジネーションが反映する商品棚

パン屋さんで一番数が出るのはバゲットではありますが、そのほかにもパン屋さんにはたくさんの種類のパンが並びます。
日本でもおなじみの「バタール」はバゲットとリーヴル(約1キロのパン)の中間の大きさのパン、という意味ですが、これと同じくらいの大きさのパンで、全粒粉のものやとうもろこし粉のもの、マルチシリアルのもの、またドライフルーツやナッツを入れたものなど、パン職人のイマジネーションによってさまざまなパンが並びます。
そのため、バゲットを買いにだけにパン屋さんの扉を開けたのに、お店の中で出会ったいつもと違うパンも一緒に買ってしまった、ということはよくある話です。

クロワッサンはいつ食べる?

これまで、主に食事でいただくパンを見てきましたが、フランスと言えば忘れてはならないパンがクロワッサンです。
フランスの朝食はクロワッサン、というイメージが強いですが、実際のところ、一般的にクロワッサンが朝食に登場するのはそう頻繁ではありません。例えば週末や誰かが泊まりに来た時、または気分を変えたいときなど、少し非日常感を出したいときに買うことが多いのです。

おいしいけれどカロリーが高めなので毎日いただくのは気が引ける、ということもあるかもしれませんし、何しろクロワッサン一つの値段でバゲットが一本買えるのですから、経済的でもない、ということになります。

また、クロワッサンはフランスではパティスリー(パン菓子、菓子)とされ、朝食やおやつとして食べられることはあっても、バゲットのように食事で供されることはありません。ただ、クロワッサンをサンドイッチにしていただくことはあります。例えば、クロワッサンにハムやエメンタールなどのチーズを挟み、クロワッサンの上にも削ったチーズを乗せてオーブンで軽く焼いたものは定番のサンドイッチになっています。

バゲットの保存のしかた

ところで、いくらバゲットが大好きなフランス人とはいえ、食べきれないこともままあります。そんな時はどうするのでしょうか。
まず、保存する時は大判のトーションでくるんでおきます。トーションは大判の木綿の布巾で、フランス家庭の台所には必ずあるものです。お皿や手を拭くためにも使える万能布巾と言ったところでしょうか。

パンをくるむ時は、空気の乾燥具合によってトーションを二重重ねにしたり、トーションを湿らせたり、一度トーションでくるんでからさらに紙袋やビニール袋に入れたりと調整します。でも、いきなりビニール袋には入れません。そうするとどうしても湿気っぽくなってしまい、皮のカリッとした風味が損なわれてしまうからです。 

一日前のバゲットなら、トーションにくるんでおけば翌朝トーストして十分おいしくいただけます。また、もしバゲット一本丸ごと硬くなってしまったら、バゲットを水で濡らした後、200℃で予熱したオーブンで5~7分焼きます。あまりにもガチガチに硬くなってしまったバゲットには向きませんが、このまま食べるにはちょっと、という程度の硬さでしたらぜひお試しください。
さらに、バゲットをそのまま一本冷凍することも可能です。食べる時には、200℃で予熱したオーブンで5分焼いたらオーブンの電源を切って、さらにそのまま5分オーブンの中に入れておきます。こうすることでバゲットがほぼ元の姿に戻るので、覚えておくと便利です。

パン文化を愛し守る人々

2021年にフランスのニュースチャンネル、BFM TVが行った調査によると、フランス人がパンを購入する際基準とするのは味、パン職人の技術、そして新鮮さだそうです。

どれだけスーパーでパンを売っていても、フランスの人々が求めるのは職人の焼いた焼きたてのパン。便利さに頼らず日々パン屋さんに足を運ぶ姿に、自国のパンとその文化への愛情と誇りを感じずにはいられません。

フランスのパン屋さんでは、もし一本が多すぎると思ったら、その半分「ドゥミ」を注文することができます。そうすると、その場で店員さんが一本のバゲットなどを半分に切って売ってくれるのです。ちょっと小腹が空いたとき、また小さな子どもにすぐ食べさせたいときなどはとても重宝します。こんなやさしさも、人々がパン屋さんに通い続ける理由の一つではないでしょうか。

 

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 吉田裕美子

フランス・ノルマンディー地方の小さな町、ヴェルノン在住。フランスの人々の「楽しむ」精神に触発されて、日々料理すること、食べることに喜びを見出しています。最近、フランスの食まわりについてのブログ「マリアージュの国、フランスのおいしい食卓」を始めました。

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