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國府田(こうだ)商店 ーインド で出会ったヴィジョングラスの魅力

國府田(こうだ)商店 ーインド で出会ったヴィジョングラスの魅力

VISION(ヴィジョン)グラスの魅力ー國府田 典明氏インタビュー

ーBOROSIL社はインドの会社です。インドの会社からの輸入を始めたきっかけを教えてください?

ヴィジョングラスを好きになってしまったから

 端的に言うと、単純にヴィジョングラスが好きになったと言うことです。
 2011年9月に夫婦でインド旅行に行き、最北部ラダック地方のレー(Leh)という街にあるカフェにたまたま立ち寄った時に、このグラスと出会い、驚きを受けたのが最初のきっかけです。

 インド最北部ラダック地方にあるLeh(レー)標高3,500メートルほどに位置する山岳都市

 マナリ〜レーロードは絶景スポット、でも高山病にも注意です。

 レーは、インド最北端の街で、ニューデリーからバスで行こうということになり、途中のマナリ(Manali)という温泉地経由でレーに入りました。マナリからレーまでは、標高5,000メートル級の山々と越えなければなりません。断層が剥き出しの荒涼とした山合を縫うように走り抜ける、まさに絶景の連続でした。日本の観光地はかなり整備されていますが、人の手が入っていない、その剥き出しの自然に感動しました。だいぶ高山病に苦しみながらも、なんとかバスでレーの街に入りました。

 レーは、観光地であり、多くの外国人が訪れるので様々なサービスが行き届いていますし、また、「懐かしい未来ーラダックから学ぶ ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ著」という本があるほどに、旧来の循環型社会として注目される土地でもあります。例えば、グラスと出会ったカフェのランドリーには、その汚水をきちんと処理しているというように自然環境にも配慮していました。そんなレーという土地にすっかり魅了されていましたね。

 観光名所でもある15世紀創建のティクセ仏教寺院 

ビジョングラスとの出会い

 そのレーのカフェで、ヴィジョングラスに出会いました。側面も底も全て同じような厚さで、筒型のとてもシンプルなグラスをインドで発見したことが、新鮮な驚きでした。 
 ちょうど、私たち夫婦がインドを旅行した年は、東日本大震災があり、暮らし方を考え直すきっかけともなりました。サステナブル・シンプルな暮らしという事も注目され始めたころだったかと思います。妻は、バックパッカーとしての旅行が好きで、当時は一年に一回、インドを訪問していまして、インドのシンプルなお皿やスプーン等の日用の道具を収集していました。この驚きは、タイミングがピッタリと合ったということかもしれません。
 とにかく、このグラスを探して買って帰ろうということになり、いろんな人に尋ね、食器屋でお土産として購入して帰国しました。

レー域内を流れるインダス川 

暮らしに馴染むグラスは生きる基本を感じる

 帰国して1年ちょっと経ったくらいで、このヴィジョングラスを日常的に使っていると、相変わらず飽きることなく、すっかり私たちの暮らしに馴染んでました。

「こういうグラスってなかなか日本ではないね」
「このグラスをこれからも使い続けるにはどうしたらいいだろう」
ということを夫婦で話し合うようになりました。

 当時は、妻はケータリングをメインとしたフードデザイナーとしてフリーランスの仕事を、私は、今も続けているのですが、舞台の音響の仕事をしておりました。それまでは、アートの周辺で活動することが多くありました。そして、日々、目にするプロダクト製品は、使いやすさなども考えられているのだろうけれど、差別化する為のデザインに見えてしまう事もありました。

 そんな中、このヴィジョングラスは、差別化とは真逆なすごく単純で、シンプルで、生きていく基本的なものを感じさせてくれたんです。このグラスで水を飲むということは、何か象徴的な感覚がありますね。そして結論として、輸入してみようということなり、直接、現地の製造メーカーBOROSIL(ボロシル)社へメールすることになりました。 

インドから3ヶ月も返信がこない!?

 そして、返事が来たのがなんと3ヶ月後だったんです。後日、聞いてみるとスパムだと思って、返信しなかったということでした。まあ、突然、日本の個人から取引してくれといっても、信じてもらえないでしょうね。返信をもらって、妻が単身でインド、ムンバイのボロシル社へいって、交渉するんです。ボロシル社の担当者もビックリしたでしょうね。それが、結果的に熱意を伝えることになり、強い信頼を得て、取引を開始することになりました。



ボロシル社の拠点がある、インド最大商業都市ムンバイ。都市部には、イギリス統治時代の古い建造物が多くある観光都市でもある。

いよいよ輸入開始へ

 実は、当時ビジョングラスは輸出していなかったんです。それまで30年ほどに渡ってインド国内流通製品でした。丁度、同じタイミングで、アメリカの会社からヴィジョングラスを輸入したいという依頼があったようです。アメリカの会社は、インドの砂漠地帯でビジョンのグラスを見つけたようで、ボロシル社は、なぜそんな高山や砂漠のような僻地で見つけてくるんだと(笑)

 ボロシル社は、インドでは有名な理化学ガラスメーカーで、ラボ用のビーカー等の製品は、海外への輸出もしています。そして、2013年からヴィジョングラスの輸出を開始することになりました。

ーVOSION GLASS(ヴィジョングラス)の魅力を教えてください。

ヴィジョングラスと暮らしとの距離感

 ヴィジョングラスは、長いガラス管を切って作ります。数メートル長のガラス管を、グラス2個分の長さにカットして、製造ラインに流していきます。このガラス管の真ん中をバーナーで転がしながらカットして、底面を成型していきます。口部もバーナーをあてながら、角を取っていきます。

 ビジョングラスにサイズの個体差がでるのは、もともとの長いガラス管の差と回転させながら、成型させる工程にあります。
 メーカーからは、プラスマイナス2ミリと言われています。もちろん、「使う」ということは問題はありませんが、この個体差、ゆらぎみないなものを感じる部分が、このグラスの特徴だと思っています。完璧すぎると、緊張感が高まりますが、このゆらぎが、力の抜けた「いい魅力」になっていると感じます。
 毎日使い続けることに対しての適切な距離感、いい距離感がこのヴィジョングラスなんです。

検品の基準は、価値観の基準

 もともと、私は、輸入や販売の仕事を経験していないので、輸入開始当初は検品基準もよくわかっていませんでした。その中で、輸入を開始して、1個1個検品してみると、半分くらいは問題があると感じてしまったんです。汚れや、傷がありました。ボロシル社に連絡すると、「わかりました」との返答で、徐々に改善はされますが、2割程度はまだ、なんらかの問題のある商品が入ってくる。そこで、下げ止まった感じでしたので、また、連絡すると、「私たちは使えるものを出荷しています」との返答でした。そこで、はっとしました。私たちはきれいで、完全なものを基準としているが、インド側は使えるものが基準。これは価値観の違いだと気づきました。

 私たちは実際に、検品ではじいたものを日々使っていますが、普段つかっていて、気になるかといえば、全く気にならない。それは、使うことに問題がないことだとわかったのです。

 夫婦でのレーへの旅行で、ヴィジョングラスを購入した時にも同じことをしていました。店頭に並んでいるものより「もっと、きれいなものありますか?」「展示品ではなく、在庫してあるものを見せてもらえますか?」店員は、展示してある商品を一生懸命拭いて「ノープロブレム」と言っていたのを思い出しました。それで、お客様にどこまでだったら、受け入れられますか?というのを直接聞くために、2015年に「VISION GLASS NO PROBLEM展」というのを開催しようと考えたのです。

ヴィジョングラスの魅力について、お話し頂いた國府田さん

価値基準のボーダーについての問い
「ヴィジョングラスノープロブレム展」を開催

 インドのボロシル社は、日本向けに特別な検品をしてもらい、かなり歩み寄ってもらっていました。確かに、擦り傷はあるが、何の為に使うかを考えると、何の問題もない。特に目的もなく、きれいなものを、擦り傷が一切ないといった日本側からの要望を押し付けることはフェアじゃないと感じていました。ボロシル社によると、いわゆる日本的な検品では100個のうち、7個くらいしか出荷できず、残りの93個はインド国内などへ出荷することになるとのことでした。
  
「VISION GLASS NO PROBLEM展」は、このグラスが良品とされる基準はどこら辺にあるのかをリサーチするという目的と、使う人にとっての良品とは何か、「もの」の背景も説明した上で一段踏み込んで考えてもらいたという目的で開催しました。

 使用上問題のない、小さな擦り傷をB級品や不良品とする事は、その商品が正当な扱いを受けていないことになってしまうので、値引きせず販売しています。傷があるのに値引きしない事によって、なぜなのかを考えてもらうきっかけになります。

 また、選べる事が大事だと思っており、プレゼント用だから傷がないものを、というのは、その通りだと思います。一方で自分で使うなら、これくらいの傷ならいいかという可能性は割とあると実感しています。

「もの」の背景を知る事で納得できる場合もあります。あと、全ての人に理解されなくてもよく、何割かの人にこの「NO PROBLEM品」を受け入れてもらえる事実が大事だと思っています。

ーご自宅で、VISION GLASS(ビジョングラス)をどのように使っていますか? 

好きなものを好きなグラスで

 自宅では、ビールを飲むときにSサイズ(φ6.5cm x H7cm 210ml)を使っています。Sサイズはビール1缶を2杯で飲むのにちょうどいい、それがほんとの日常の使い方ですね。子供も今、2歳と5歳なんですけど、牛乳を飲むのに使っています。食洗機で割れることもなく、丈夫なので、日常使いで使っています。

VISION GLASS JP
ヴィジョングラスジェーピー

インドの理化学ガラスメーカーBOROSIL社が製造する、円柱型の耐熱グラス。VISION GLASS JP(國府田典明さんと小沢朋子さんによって2013年設立)は日本の輸入販売元としてブランディング、卸、販売を手がける。

Web Site
國府田商店株式会社

BOROSIL社について

インドムンバイを本拠地に世界20カ国以上に輸出するガラスメーカーBOROSIL(ボロシル)社。試験管などの理化学器具を中心に、家庭用品ガラス器具や現在ではソーラーパネルのガラスも手がけている。

 ボロシルのグラスブランドのVISION(ヴィジョン)の特徴は、実験器具のビーカーやフラスコと同じホウケイ酸ガラスを用い、耐熱温度350℃、耐熱温度差150℃で、熱湯、電子レンジ、オーブン、直火に対応しているという多用途性。グラスとして使うことはもちろん、電子レンジ温め、蒸し器に入れての茶碗蒸し、オーブンを使っての焼き菓子にも使える。
 また、専用のコルクとガラスの蓋を使えば、保存容器にもなる。使う方のスタイルに合わせることが、できるまさにミニマルなガラス容器。デザインも非常にシンプル。

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