[フランス] フランス流太陽の季節のピクニック
フランス流ピクニックの楽しみ方
太陽の季節を存分に楽しむために
長く暗いフランス北部の冬。だから春が来て太陽が空に戻ると、人々は待ってましたとばかりに外に出かけて行きます。冬の間はがらんと寂しかったカフェのテラス席も一気に活気づいて、人々のおしゃべりの花が咲きます。
昔、旅行でフランスを訪れた時はどうしてそんなにテラス席を好むのだろうと不思議に思ったものですが、今ではそれがどうしてかわかります。空に太陽がさんさんと輝くこの季節を肌で感じ、存分に楽しみたいからなのです。長く暗い冬を越した人々は、太陽の光を渇望しています。
活気づくのはカフェだけではありません。家の窓を開ければ、近所の庭からおしゃべりの声、そして食器が立てる音が聞こえてくるのもこの季節です。
フランスの日常に長く根付いているピクニック
カフェのテラス席や家の庭に出したテーブルよりも、さらに開放的に太陽の下で食事を楽しめるのがピクニック。フランスの人はピクニックが大好きです。
あちこちに置かれたちょっとしたものをつまんで食べる、という意味の「ピクニック」が始まったのはルネサンスの時代と言いますから、フランスのピクニックの歴史は相当長いものです。その始まりは農民が仕事の合間に取った食事であったり、あるいは貴族が狩りでの休憩に取った持ち寄りの食事でした。
19世紀にはそんな草の上での食事が人々の暮らしに定着していきます。19世紀と言えば、ピクニックでの一コマを描いた印象派画家・マネの作品『草上の昼食』が描かれた時代です。この頃、7月14日の革命記念日にだけかつての王侯貴族の庭園が庶民に解放され、人々はピクニックの楽しさを味わいました。そして次第に、ピクニックが日常生活に溶け込んでいきます。
ピクニックアイテムはスタイル優先で
さて、それでは現代のピクニックはどのように楽しまれているのでしょうか。
まずは持ち物ですが、ピクニックバスケットを持って行くのが定番中の定番です。蓋つきのバスケットはまるで小さな柳行李と言った風情で、かなり頑丈な作りになっています。
そして蓋を開けると、なかなかの重みを感じます。というのも、この蓋の内側にお皿やカトラリーといった食器が取りつけられるようになっているからなのです。そしてお皿は陶器、ナイフやフォーク、スプーンは家で使うような金属製のもの。重くなるわけです。
使い捨ての食器が使われないのにはもちろんエコロジー的な理由もあるでしょう。また、伝統的なスタイルを大切に受け継ぐ習慣もあります。が、何よりこちらの方が美しいから、という主張が聞こえてきそうなのがここフランス。機能性より美しさを重視します。かなり利便性の高そうなリュックサック型のピクニックセットが主流にならないのも納得、というわけです。
バスケットに施されたフランスらしい工夫とは
それからもう一つ、フランスらしいと思う工夫があります。それは、バスケットの中に取り付けられたワインボトルを固定するためのベルトです。フランスで見かけるピクニックバスケットのサイズがどれも横幅40cm以上あるのはそのせいでしょう。
バスケットの中にはもちろん、ワイングラスを固定するベルトもついています。我が家のバスケットに付属で入っていたのはプラスチックのワイングラスですが、使い捨てではなく洗って繰り返し使うものです。
サンドイッチをフランス風にするあの食材
ピクニックで食べるものと言えば、やはりサンドイッチです。しかも、その場で作るサンドイッチなら手がかからない上に具材でパンが湿ることもないので、ピクニックにはもってこいというもの。
しかも具材もハムやソシソン(乾燥ソーセージ)、パテ、リエット(元々は豚肉のほぐし身を豚脂で調理したフランス伝統の保存食。鶏、鴨、鯖やツナなど魚介で作ったものも)など買ってきたものをそのまま持って行けば良いのでとても便利、一石二鳥というわけです。
そして、ここで忘れてはならない名脇役がコルニション、ミニきゅうりのピクルスです。ハムやパテだけでももちろん美味しいのですが、コルニションを入れることでその酸味が肉や魚の脂ととても良く調和し、味に深みが出ます。
もちろん、さらにチーズやトマト、レタスを挟んだり、その場で作るサンドイッチは自由に好きなものを組み合わせられるのも魅力です。
ちなみに、ピクニックによく登場するパンはバゲットやパン・ド・カンパーニュ。パン・ド・カンパーニュは酸味のあるライ麦粉が使われているので、先ほどのコルニションと同じように脂気のある具材との相性もばっちりです。
パンド・カンパーニュ・・日本ではフランスの田舎パンという名称で販売されていることも。中の白い部分(クラム)の密度が高いので、サンドイッチに最適。
超簡単フランス風カレーチキンサンド
フランスにパン屋さんは星の数ほどありますが、サンドイッチのメニューはと言えば、実はそれほど多くありません。
不動の人気を誇るのはハム&バター。シンプルなだけに素材が良くないと美味しくならないサンドイッチです。その他の定番はハム&チーズ(よく見かけるのはエメンタール)、カマンベールやブリーなどのチーズ、ローストチキン、ツナ、それからシャルキュトリー類(ハム・ソーセージ)などですが、少しエキゾチックなカレー風味のチキンサンドイッチも、もはや定番と言ってよいほどかなり人気があります。
エメンタール・・スイス発祥の硬めのチーズ。マイルドな味わいで、サンドイッチの定番。チーズフォンデュにも使われることで有名
ブリー・・カマンベールと同じ白カビのフランス伝統のチーズ。カマンベールよりもマイルドで、臭みが少ないのが特徴。シャルキュトリー・・フランスの食材カテゴリーで、ハム、ソーセージなど、食肉加工品の総称。
ローストチキンにカレー風味のソースをかけたものからチキンのカレー煮込みまでいろいろなレシピがありますが、今回はピクニックにうってつけの超簡単レシピをご紹介します。
鶏むね肉を一口大に切り、オリーブオイルで炒めます。ゆで卵は適当に細かく刻みます。その二つを同量のマヨネーズ、ディジョンマスタード、カレー粉を混ぜて作ったソースに絡めればできあがり。お好みでトマトやレタスを挟んでいただきます。ディジョンマスタードがたっぷり入るところがフランス風。辛味が苦手な方は少なめにどうぞ。
ディジョンマスタード・・マスタードの殻を取り除いたなめらかなマスタード。まろやかで、上品な辛さが特徴。
ピクニックは簡単に美味しく、が一番
ピクニックに持って行く食べ物は、基本的に「手のかからないもの」です。だから朝早く起きてお弁当の用意をすることもありません。作るとすれば簡単にできるキッシュやケーク・サレ(塩味のパウンドケーキ)などでしょうか。
それからお店でできあいのお惣菜を持って行くことも。我が家でよく持って行くのはキャロット・ラぺやタブレ(粒状パスタのスム―ルで作ったサラダ)ですが、時には丸ごとのローストチキンを持って行き、その場で切り分けて食べることも。その時に添えられるのはポテトチップスです。スーパーなどでも、ローストチキンとポテトチップスがよく隣合わせで売られています。
自然との一体感を求めて
パリなどの大都市では公園でピクニックをすることが多いのですが、それ以外の場所では何でもないような自然の中でピクニックを楽しむことが多いフランス。周りに観光スポットがあるというわけでもない、でもゆっくり自然に親しめるような場所でのんびり過ごします。
国内の地方を問わず点在しているピクニックテーブルで、または自分で見つけたお気に入りの場所で。太陽の恵みを心地よく感じながら食事を楽しむピクニックは、この季節ならではの喜びなのです。
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プロフィール
吉田裕美子
フランス・ノルマンディー地方の小さな町、ヴェルノン在住。フランスの人々の「楽しむ」精神に触発されて、日々料理すること、食べることに喜びを見出しています。最近、フランスの食まわりについてのブログ「マリアージュの国、フランスのおいしい食卓」を始めました。
Web Site
マリアージュの国、フランスのおいしい食卓