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Travellers #6 [フランス] アペロApéroしようよ!

Travellers #6 [フランス] アペロApéroしようよ!

◯食前酒、軽食、楽しいおしゃべりそれがアペロ 

 アペリティフ(aperitif)は、食事の前にいただくお酒。「開ける」という意味のラテン語"aperire"からその名がついたそうです。面白いのは、開けるのはお酒の瓶の栓ではなく、毛穴だったのだとか!?毛穴を開いて、デトックスをするために飲むもの、だったようです。
 このアペリティフ、日常ではくだけた言い方の「アペロ」と呼ばれています。アペロは食前酒という意味よりも、家族や友人など、親しい人たちととリラックスした雰囲気の中で食前酒を酌み交わしながら楽しく「おしゃべりして過ごす時間」という意味で使われます。
 「アペロしようか?」と言えば、「一緒に楽しい時間を過ごそう」ということであり、単に食前酒を飲もう、ということではなさそうです。
 そもそもは体の健康のために始まったアペロの習慣は、日々の疲れを癒す心のデトックス効果も大、なのですね。
 それぞれの家庭で違いはありますが、アペロはたいてい「サロン」と呼ばれる居間で、ソファなどにゆったり腰かけ、楽な姿勢で楽しみます。
 そしてアペロのおつまみもなくなったかなという頃に、食卓に移動して食事の開始、となるわけです。その会食にかかる時間は相当なもので、我が家の場合4時間から5時間くらいかかることはざら。でも案外、あっという間に感じるのだから不思議です。

◯アペロの食前酒は、苦くて甘いリキュールやカクテルで

 さて、そもそもの意味の食前酒とは、どんなものをいただくのでしょう。
 食前酒は伝統的には薬草を使ったものから始まりました。きっと、薬草やスパイスのシロップのような今より苦味のあるものだったかもしれません。
 現在でもスパイスのアニスを効かせた南仏生まれの「パスティス」やワインにハーブやスパイスの香りをつけた白ワイン、あのマティーニの味のベースに使われる「ベルモット」は定番です。
 ワインベースのものでは、甘めのものも好まれフルーツやスパイスをワインとミックスさせた「サングリア」やワインにブランデーを入れ発酵させた「ポートワイン」などもよく飲まれます。

 

左から
SUZE(ハーブリキュール) 黄色いカンパリと言われ、ほろ苦さと甘さが絶妙
NOILLY PART(フランスベルモット酒) マティーニやマンハッタンに使われる
RICARD PASTIS (ハーブリキュール) スパイシーな香りと清涼感のあるリキュール
ANGOSTURA BITTERS(ハーブリキュール)カクテルに最後に1〜2滴、苦味が味を引き立てる
FENELON 赤ワインにくるみとカシスを加えた甘口リキュール

 
◯ワインベースは人気のカクテル 

 我が家でワインベースの食前酒と言えば、「キールロワイヤル」が多いです。キールロワイヤルはシャンパンにカシスリキュールを加えたものですが、実は普段使いではシャンパンではなくスパークリングワインで代用することもしばしばです。

 もちろん、カシスリキュールを入れずにそのままシャンパンやスパークリングワインを楽しむことも。シャンパンなりスパークリングワインなりとカシスリキュールをテーブルに置いて、「カシス入れるひとー?」と皆に尋ねながらグラスに食前酒を用意します。


◯フランスカクテル事情〜人気のラム酒

 カクテルは日本では、若い人に好まれるイメージがありますが、フランスでは幅広い年齢層に人気です。19世紀の終わりにアメリカからやってきたカクテルは、1900年代にはすでに人気の広まりを見せていたそうで、ベースになっていたのはそれまでの薬草酒からは離れてジンやコニャック、シャンパンだったそうです。

 今ではそこにウォッカやラム酒なども加わり、そのレシピは膨大。アペロ向けのカクテルレシピを集めた本もたくさん出版されています。
 もともと、食前酒は食事の前に薬草やスパイスをとり、健康を増進する目的でしたが、次第にカクテルを中心にしたものへと変わっていきました。
 カクテルにはいろいろなベースのものがありますが、フランスで人気があるのがラム酒です。さとうきびのまろやかな甘さが、甘いものを好むフランスの人たちのお口に合うのでしょうが、それだけでなく、フランスの海外県の存在が大きいように思います。

 フランスには本土から海を隔てた場所にいくつかの海外県が存在します。その中でカリブ海に浮かぶ島マルティニークやインド洋のマダガスカルにほど近いレユニオン島などではさとうきびが栽培され、そこで良質のラム酒が生産されています。海外県とはいえ同じフランス国内の製品なので入手しやすいということが人気の要因のひとつです。

 それでは、このラム酒を使ったフランスで人気のカリブ風カクテル2つをご紹介します。これは我が家でもよく登場します

 まず初めは「ティ・ポンシュ」。「ティ」というのは小さい、という意味の「プティ」の省略形、「ポンシュ」はパンチ(フルーツを混ぜるの意味)のフランス語読みです。これはホワイトラムにさとうきびのシロップとライム果汁を合わせたシンプルなもの。暑い夏には氷を加えることもある、ショートグラスのカクテルです。

 もう一つは「ポンシュ・プランター」、ただ「プランター」と呼ぶことも。日本では「プランターズ・カクテル」の名前でおなじみです。
 これは、フルーツジュースを使ったロングカクテルで、正式なレシピではオレンジジュースとパイナップルジュース両方を使いますが、家庭ではお好み次第でどちらか一つにしたり、グアバやマルチフルーツのジュースを使ったりと自由
に楽しんでいます。
 このフルーツジュースにダークラム、さとうきびのシロップ、レモン果汁、グレナデンシロップ(ザクロシロップ)を合わせ、最後にトリニダード・トバゴの苦味酒として有名な、アンゴスチュラ・ビターズを数滴垂らすことで、消化を促進効果を期待できます。食前酒にはもってこいですね。

 

◯アペロのおつまみは手軽でなければ

 おつまみは、手軽に用意できるフィンガーフードが多いです。
 まず、簡単で、人気があるのはピーナッツ、カシューナッツ、ピスタチオを初めとしたナッツ類。また、プレッツェルやポテトチップスもよく出ます。ポテトチップスは健康を気にして無塩のものも売られています。

 そして私がとてもフランスっぽいなあと思うのは、カマンベール、ロックフォール、コンテなどチーズの風味がついたビスケットやクラッカーです。アペロのチーズは、チーズ風味のスナックやエメンタールなどの淡白なものだけ。というのも、あまり濃厚な味のチーズだと、その後の食事が存分に味わえないからです。
 それから、ミニトマトやオリーブもヘルシーなので好まれます。


 
 そのほか、人気なおつまみと言えば、ソーセージ類でしょうか。薄く切るだけ、しかも小さなカッティングボードをテーブルに持って行き、その場で切るなんてこともよくあります。

 私のお気に入りはにんにくの風味を効かせた「ソシソン・ア・ライユ」、または「ソシソン・ド・パリ」とも呼ばれています。にんにくの風味が食欲をそそって、食前酒のお供にはぴったりです。

 

 

◯本格アペロのおつまみも工夫して手軽に

 共働き家庭の多いフランス。アペロのおつまみは、初めから全て手作りでなくても、見た目にも美しく作れるような食材がたくさん売られています。

 パイ生地に出来合いのペストソース(バジル、松の実、にんにく、パルミジャーノ・レッジャーのなどのチーズを合わせたイタリア・ジェノア発祥のソース)を塗って、くるくる巻いて棒状に形を整えオーブンで焼いたり、花型や六角形型など華やかな形のパイ生地でできた小さなカップを買ってきて詰め物をすればアペロの定番、ブシェ(一口サイズの食べ物)になります。

 パテ、フムス、ザジキ(ヨーグルトに刻んだきゅうりやにんにく、ミントやディルなどのハーブを加えたギリシャ料理)などは薄く切ったバゲットに伸ばしてミニトマトやハーブで飾りつけをすれば、立派なカナッペ(クラッカーや小さめのパンにチーズやハムなどの食材をのせたおつまみ)になります。

 
 無理せず、手を抜けるところは抜いて、工夫することで美味しいものを楽しむ。だって、アペロの一番の目的は親しい仲間と楽しい時間を過ごすことなのだから。アペロの準備一つとっても、そんなフランスの人たちの人生観を垣間見ることができる気がするのです。 

 

プロフィール

吉田裕美子

 フランス・ノルマンディー地方の小さな町、ヴェルノン在住。フランスの人々の「楽しむ」精神に触発されて、日々料理すること、食べることに喜びを見出しています。最近、フランスの食まわりについてのブログ「マリアージュの国、フランスのおいしい食卓」を始めました。

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