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Travellers #4 [フランス] ハーブティーで心と体を整える。

Travellers #4 [フランス] ハーブティーで心と体を整える。

 ハーブティーは心と体を整えてくれる効能があります。季節やその日の体調に合わせ、ぴったりのハーブティーを調合する。いわば、西洋の漢方でしょうか?ヨーロッパでは、体調を整えるだけでなく、ハーブティーを日常の中に取り入れ、その風味を楽しんだり、お店や旅先で新たなハーブティーの発見に喜びを感じながら、心と体を癒しているようです。
 そんなハーブティーの文化をフランス ヴェルノン在住(印象派の画家、モネの睡蓮で有名なジヴェルニーのお隣の街です)吉田さんにハーブティーのある生活について、教えてもらいました。

薬草から作るハーブティー

 三月に入り日も伸びて、水仙やクロッカスなどの花が咲き始めたフランス北部ですが、まだまだ寒い日が続いています。寒くて体調を崩しやすい冬の季節は、一年のうちで一番ハーブティーのお世話になる機会が多い季節かも知れません。


 フランスでは薬局にも、スーパーにもパッケージに効能が明記されたハーブティーがずらりと並んでいます。老若男女問わずハーブティーが日常に溶け込んでいます。例えば「今日は少々食べ過ぎた」時は消化促進を、「なんだか体調を崩しやすい」時は免疫力強化を謳うハーブティーを飲むのです。
 
 中世ヨーロッパで薬草は「シンプルな薬」と呼ばれていたそうですが、薬草から作るハーブティーは、はるか昔から健康のための強い味方だったのでしょう。ちなみに、フランスではかつて1312年から600年以上の長きにわたって、薬草を調合する専門家、エルボリストの国家資格があったそうです。

 ところで、フランスで医師の診察を受けるときは、緊急の場合を除いてまずかかりつけの家庭医に診てもらいます。そしてその際、予約が必要になるのですが、混んでいるときには予約が取れるのが1週間や2週間後になるのはざらの話。そんなわけで日頃から体調を整えておく必要もあるのです。余談ですが、フランスには薬局だけでなく、植物療法含む医療用品を扱う”パラファーマシー”という専門店がたくさんあるのも頷けるわけです。

 さて、このように、フランスでは、手軽にハーブティーを購入できます。スーパー、薬局、パラファーマシー、オーガニック店、紅茶専門店、そして薬草専門店のエルボリストリーなどなど。それから修道院で作られたものもあり、修道院併設の売店や近隣の商店で購入することもできます。修道院は、中世の昔から薬草が育てられ研究されてきた、ハーブティーのパイオニア的な場所。私はフランスで旅行に出ると、その土地の修道院や地元生産者によるハーブティーを購入するのを旅の楽しみにしています。作り手によって様々なブレンドがあり、効能や香り、またその時の気分に合うブレンドをいろいろ試すのも楽しいものです。

修道院ブレンドのハーブティー

 今回は手持ちのハーブティーをいくつかご紹介します。
 まずはその修道院のハーブティーから。

 一つ目は”Méditation au cloître”(修道院廻廊での瞑想)という名前のブレンドです。乾燥りんご、乾燥もも、ミント、オレンジの皮、ラベンダー、バレリアン、ローマンカモミール、ゼニアオイが入っています。薬草園とともに果樹園のあることも多い修道院らしいブレンドです。

 そしてもう一つは消化促進のためのブレンドで、”Passe Brouet”(ブルーエの時間)という名前。ブルーエは中世の頃に食された軽めのブイヨンの一種で、好みにより肉、卵、野菜などを加えたものだそうです。ちなみに味付けは酢と塩。健康的な食事にも思えるブルーエの名がついたこのブレンドの中身は、レモンバーム、フェンネル、ミント、コリアンダー、イラクサ、ヤグルマギクです。こってりした食事が増える冬にはありがたいブレンドです。

冬に効果を発揮するハーブブレンドティーも

 冬ならではのブレンドもあります。
 我が家には”Hivernale”(冬の)という名前のハーブティー、それから寒気や風邪という意味の”Coup de froid”と名前がついたハーブティーがあります。

 ”Hivernale”(冬の)の方は、タイム、ローズマリー、ユーカリ、ラベンダーのブレンドです。殺菌効果のある薬草に、リラックス効果や咳やのどの痛みの緩和効果を持つラベンダーが加えられているのですが、このラベンダーが少し入るだけで青々とした風味が押さえられ、ほっとやわらかな香りになるのです。

 もう一方の”Coup de froid”(寒気、風邪)はフランス南部にある中央高地で採れた花や薬草のブレンドです。ラズベリーの葉、ゼニアオイ、松の芽、プリムラ、ワイルドタイム、カレンデュラが合わせられています。私は文字通り寒気を感じたときにこのハーブティーを飲むことが多いのですが、こんな風にストレートな名前がついていると迷いなくその時必要なハーブティーがわかって便利ですね。我が家には”Foie”(肝臓)とパッケージに書かれたハーブティーも常備されていて、飲み過ぎたときには助けを借ります。

 それから冬のハーブティーをもう一つ。パッケージにある文言やイラストから言えば、より正確にはクリスマスシーズンの、と言うべきかも知れません。”CACAO et EPICES Magique”、「カカオ&スパイスマジック」です。こちらはカカオ、シナモン、生姜、リコリス、ターメリックのブレンドで、そのうちカカオが全体の45%を占めています。そのために味はスパイスの効いたチョコレートのような感じで、しかもシュガーフリーなのでチョコレートが食べたいけれどお砂糖を控えたいときに重宝しています。

 ハーブティーのジャケ買い?想像ふくらむネーミング

 さて、おしまいに最近「ブレンド名買い」したハーブティーを。
 大抵はブレンドされている薬草の種類によって購入するハーブティーを決めるのですが、時にはただそのブレンドにつけられた名前に惹かれて手にするものもあります。つい先日、地元紅茶専門店で出会ったハーブティーは、その名も”Nuit à Versailles”(ベルサイユの夜)。日本でもフランス紅茶専門店として有名なダマンフレールの製品です。名前を聞いただけで一体どんな香りがするのだろう、と気になりませんか。
  ブレンドのベースになっているのは、フランスでハーブティーと言えば、のレモンバーベナとリンデンです。そこにオレンジやすみれの花が混じりあい、キウイ、黄桃、ベルガモットの香りが乗せられています。爽やかさ、穏やかさ、甘さ、華やかさが見事に調和して、つい飲みながら「ベルサイユの夜」という名前を思い出してはうっとり夢心地になってしまいます。

 

 フランスには数えきれないほどのハーブティーの種類がありますが、それも人々に愛され、必要とされてきた歴史があるからなのでしょう。フランス語に、bien-êtreという言葉がありますが、それは体だけでなく、心も健全な状態のことです。
 フランスで暮らしているとよくこの言葉を見聞きするのは、自分を大切にし、毎日を自分らしく楽しみ、幸せでいることをフランスの人々が大切にしているからではないかと思うのです。そしてハーブティーは、そのための一番身近な相棒なのかも知れません。

プロフィール

吉田裕美子

 フランス・ノルマンディー地方の小さな町、ヴェルノン在住。フランスの人々の「楽しむ」精神に触発されて、日々料理すること、食べることに喜びを見出しています。最近、フランスの食まわりについてのブログ「マリアージュの国、フランスのおいしい食卓」を始めました。